パンパンのカバンが意味するもの
社協名 |
富岡町社会福祉協議会 |
時 期 |
平成25年度~ |
場 所 |
生活支援相談員内部研修会 |
【背景】
- 富岡町は津波で沿岸地区を中心に壊滅的な被害を受け、原発事故で警戒区域に指定されたため全町民(15,960人)が避難となった。
- 平成25年頃から、避難生活の終わりが見えない避難者の悩みは、住むところ、家族のこと、経済的なことなど多岐にわたり、複雑化していた。
- 避難者との会話の中にも「身寄りがない」「お金に困っている」など、一歩踏み込んだ支援が必要な内容に変化してきた。相談員は訪問時に避難者からの相談に対して支援策や窓口を伝える事が出来ず、避難者の不安を拭うことができない力不足に悩んでいた。
- 富岡町社協内で話し合いが持たれ、相談員の役割は避難者が必要とする制度、サービス、専門職へ繋ぐことであること、繋ぐには、福祉分野のみならず、住宅、仕事、教育など暮らしに関わる情報を幅広く知る必要があることを確認した。
【取組み概要】
- 以前から開催していた内部研修会を毎月開催とし、研修内容も避難者の生活課題解決に焦点を当てたタイムリーなテーマにした。
- 平成28年度は「あんしんサポート事業(日常生活自立支援事業)」「生活福祉資金貸付事業」「生活困窮者自立支援制度」等、様々な福祉制度・サービスを知るプログラムを中心に開催した。
平成28年度 内部研修 |
4月7日 |
巡回訪問における福祉援助技術について |
5月11日 |
安全運転講習会 |
6月9日 |
社協で対応できる制度を理解しよう |
7月6日 |
日常生活自立支援事業及び成年後見制度について |
8月4日 |
生活福祉資金制度の概要について |
9月21日 |
福島県避難者生活再建システムについて |
10月6日 |
富岡町復興状況について |
11月10日 |
普通救命・AED講習会 |
12月8日 |
復興公営住宅における活動方針及び活動状況について(みんぷく) |
1月12日 |
積雪のため中止 |
2月2日 |
メンタルヘルスについて |
3月2日 |
認知症サポーター養成講座 |
- 平成29年度は、ふくしま心のケアセンターの専門職を講師に迎え、精神疾患を持たれている方の対応の仕方、自殺予防についても実施した。メンタルヘルスのワークのみならず、相談員が避難者役を演じてロールプレイも行い、より実践に近い形として現場で役に立つ研修も行った。
平成29年度 内部研修 |
4月27日 |
富岡町の復興概要について |
5月11日 |
民生・児童委員制度について |
6月1日 |
生活困窮者自立支援制度について |
7月6日 |
介護保険制度について |
8月3日 |
生活困窮者自立支援制度について |
9月7日 |
精神疾患の基礎と基本的な対応について |
10月5日 |
生活保護法の概要と避難先状況について |
11月2日 |
支援者のためのメンタルヘルス(ふくしま心のケアセンター) |
12月7日 |
接遇マナーについて |
1月11日 |
コミュニケーション技術について |
2月1日 |
民生・児童委員との情報交換会 |
3月1日 |
振り返り |
▲ふくしま心のケアセンターによるメンタルヘルスのグループワーク
▲ふくしま心のケアセンターによる避難者役との会話のロールプレイ
【工夫】
- 相談員の希望や考えを取り入れるためアンケートを実施した。一番多かった要望が「接遇マナー」だった。きちんとした言葉づかい、立ち居振る舞い、相談しやすい距離等が、避難者の安心感や信頼につながり、SOSを発しやすくなり、支援がスムーズになると考えたからだった。また相談援助職の心得である避難者との適切な距離感を保つという基本に立ち返る意味でも重要な事と判断しマナー研修を開催することにした。
- また、避難者支援に関わる他機関の理解を深めるための研修も実施した。例えば、復興公営住宅のコミュニティ形成の支援をしているコミュニティ交流員を招いて話を聞き、コミュニティ交流員の活動についての理解を深めとともに、同じ地域福祉・被災者支援の仲間であることを改めて認識できた。以後、気になる住民の方の情報を共有したり、サロンや交流会が重なったりしないように情報交換しながら見守りができるようになった。
▲みんぷく「コミュニティ交流員」の活動と相互協力について理解した
【効果】
- 避難者の課題解決につながる制度・福祉サービスや援助技術の向上などを目的とする研修を増やすと、相談員の行動に変化が起きた。
- 内部ミーティングでも個々の避難者にどの制度・福祉サービスが適切なのかを検討し合う事が多くなり、研修で学んだ各種支援へ早期に着実に繋いだ実績が増えている。
- 相談員は、研修の度に資料が増えるので、相談員は資料でパンパンに膨らんだ重いカバンを持ち歩くようになったとうれしい悲鳴をあげている。
- 相談員の内部研修は、相談員の大きな自信にもつながり、避難者に対し心のゆとりもって見守り寄り添うことが出来るようになった。
▲パンパンのカバンを持って訪問する生活支援相談員