社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

伊藤信子さん
(新地町社会福祉協議会)

2021/05/26
 

生活支援相談員の10年の活動を振り返る

伊藤信子さん 伊藤信子さん
新地町社会福祉協議会
生活支援相談員
(避難者支援活動年数/9年2ケ月)


Q1:避難者支援に長く携わる上で、大切にしてきたことはなんですか。

 訪問前は自分自身に「ちゃんと話を聞くんだよ」と声をかけするようにしていました。長く携わる上でその方の性格、会話の癖が分かってくると、自分自身の癖で受け取り方に思い込みが生まれてきます。大事な事柄を聞き逃してしまう事のないようにと心がける意味で行ってきた、私が大切にして来たことです。


Q2:この10年の活動で印象に残っている出来事を教えてください。

〇ある80代夫婦のはなし
 この質問を前にした時私の頭の中にはあるご夫婦のお顔が浮かんできました。私が初めてこのご夫婦にお会いした時は旦那さんが80歳半ば、奥さんが80歳前半のお年で、震災前は小さなお店を経営していたとのことでした。奥さんはとても社交的でお話の好きな明るい方。旦那さんは口数の少ない方でしたが奥さんと私の会話をニコニコと聞いているような方でした。いつも訪問時は笑いがおこり「震災は皆同じ苦しみを味わっている、仮設に入れてもらえた事がとてもありがたい」とベッドを二つ入れた仮設住宅の部屋でベッド越しに話をしてくれていました。

〇ご夫婦が抱えた苦悩
 ある訪問時、奥さんに「これから再建するにあたり元の地域(津波の被害がなく残った地域)の方たちがお店の再建を待っていると言ってくれる。でも想像してほしい、小さなお店で品物を販売し1,2円の利益をコツコツと貯め家を建て子供を育てたものすべてが無くなってしまった。この苦労を息子夫婦にはさせたく無い」少し涙交じりの声でこの話をしてくれた時私には返す言葉が見つかりませんでした。
 次の訪問時は旦那さんの様子がおかしく、横になったきりで話をしてくれません。病気を心配しましたが、車の運転を息子さんから止められ気力がなくなってしまい、一日中ベッドに横になっているとのことでした。奥さんもとても心配していました。

〇ご夫婦の元気の源
 それから間もなく家と店を再建し仮設住宅から移っていかれました。その後お店に伺うと奥さんと旦那さんが仲良く椅子に座り近所の方とお話をしていて、旦那さんに笑顔が戻っていました。近場だけの運転ならと息子さんが許可してくれ中古の車を購入し、ご自分の受診、奥さんの病院の送り迎えをしてくれていているとの事でした。息子さんがお店を再建してくれた事もとても嬉しく、少しでも役に立たなければとお二人ともとてもすがすがしいお顔で話してくれました。
 今はお二人とも亡くなられましたが、旦那さんが亡くなられた後も奥さんは店のレジの横に座りお客さんを待っている日々を過ごしていました。私はこのお二人に、いくつになっても誰かのためになるのであれば頑張れるという強さをみせて頂きました。とても難しい問題ですが“支援の在り方とは”と自分に問いかける機会を与えて下さった事で、私の中に今でもこのお二人の顔が浮かんできます。


Q3:2月13日には再び大きな地震が発生しましたがどのように行動しましたか。

 社協は、一人暮らし、高齢者宅に電話をかけ被害状況の聞き取り、訪問をして被害状況の確認などを行いました。


  • 2021/05/26 1:00 AM