生活支援相談員の10年の活動を振り返る
酒井暢子さん
大玉村社会福祉協議会
地域福祉課地域福祉係主事
(避難者支援活動年数/8年)
Q1:避難者支援に長く携わる上で、大切にしてきたことはなんですか。
想像力です。同じ避難元地域の住民であっても、出身地や家族構成、現在の状況や今に至るまでの経験、一人一人の背景は違います。支援対象者の中には多問題を抱える方もおり、「なぜこんなことになってしまうのだ。」とびっくりしてしまうこともあります。また、見た目では支援は必要としなさそうな人が実は「助けて」を言えないタイプの人かもしれません。しかし、問題の発見や、問題の要因及び解決方法を考えるにあたって、想像力を働かせることにより、対象者に対しての「気付き」が多くなると思っています。困っているのか困っていないのか、どんなことに困っているのか。どんな気持ちなのか。嫌いなことは何か、どのようなことを大事にしているのか。もちろん想像だけで相手を決めつけるのではなく、想像による手がかり、気づきをきっかけに初めて寄り添えるようになると思っています。Q2:この10年の活動で印象に残っている出来事を教えてください。
楽しいことも、悲しいことも、悔しいことも、憤慨したことも、嬉しいことも、たくさんあるので、どれか一つと言われるととても困ってしまうのですが、今でもたまに思い出すのが、「日陰の路地の4人のおじさん」の事です。まだ生活支援相談員として日が浅く、顔も覚えていなければ、覚えられてもいない時期で、どう動いてよいのか、何を話したらよいのか緊張して活動していました。その日はサロンのお知らせか何かのチラシを仮設住宅にポスティングをしていました。仮設住宅は長屋型で前後の間隔も狭く場所によっては日陰であり、薄暗い印象があります。一人でポスティングをしており、まさにその日陰に足を踏み入れたそこには4人のおじさんが集まっていました。玄関の前だったため、この中にその部屋の住人がいるかもしれないのに、それを無視してポスティングをすることは大変印象が悪いです。チラシはそのおじさん4人に直接手渡しすることにしました。「チラシの配布をしています」ぐらい言ったかと思いますが、渡すそばから「なんだこれ」「なんのチラシだ。」「こんな紙切れいらねーぞ」と言われました。説明をしても「何の役にも立たねー」と。正直怖くて「そんなこと言わなくてもいいじゃあないか」「ひどい」という感情がありました。捨ててもらっていいのにと思いましたが、よく考えれば、おじさんたちだって見ず知らずの自分たちに対して何をしてくれるかもわからない人間を相手に、すぐに心を許すはずもなく警戒するのが普通です。自分だってそうです。もっと言えば嫌です。チラシすらもらいたくありません。おじさんたちは「いらない」というのは本心ではなかったかもしれません。そのままうすら笑いを浮かべ立ち去ろうとも思いましたが、とっさに何か言わなければいけないと思い、「そんなこと言わないで、もらってください。ポケットに入れておけば、万が一トイレに紙が無いときに、良く揉めば使えるかもしれませんよ。」口から出たのはまさかの下ネタです。少しライトに書きましたが。おじさんたちも少しびっくりした様子です。するとその中の一人のおじさんが「なんだお前、面白いな」と。ほんの少しの勇気で景色は変えられるような、少し心を開かれた瞬間を実際目にしたような気がしました。下ネタですけど(笑)<サロン等で扮装する相談員>