総括生活支援員として勤務して2年半が経過しました。今回、自分自身のキャリア形成について深く向き合う機会がありましたので、当センターを志望した時の自分の思いを、振り返ってみました。
『以前の職場は、小規模の医療機関(歯科)でした。受付業務を担当していた私は当時、被災者の方々とお話しさせていただく機会が多く、初めは診療に関する相談、ライフラインや町の情報など生活に関する必要な問いかけに、お答えしておりました。
時間の経過と共に、震災直後の過度の緊張感が少しずつほぐれたのか、一人で抱え込んでいる思いを来院時には、皆さん少しずつ語ってくれるようになりました。帰宅困難区域に指定されたゆえに自宅があるのに戻れない憤りや、やるせなさ。津波被害により家族や身内を亡くした絶望感など。たくさんの喪失感とともに、この先どのように生活を再建させていくのか?行き場のない感情がストレスとして蓄積されていく姿を、私は日々見つめていました。
小さな医療機関ではありましたが“ここに来れば誰かに会えるから”と自然にサロンのように集まり互いの近況を報告し、健康状態を確認しあう被災者の皆さん…。心に悲しみを抱きながらも思いやり深く、大切な人を失った人も周囲を気遣い、失わなかった人も失った人の悲しみや苦しみを共に背負い…各々が互いを思いやりながら、強くたくましく生きていく姿に逆にパワーをいただきました。
このように、職場での被災者の方々との関わりを通じて、病気や体調不良や痛みなどは治療で改善し健康を取り戻すことができる。しかし、心身の健康や生活の安定には、不安要因に対する具体的で実践的な支援を提供しつつ、長期的に寄り添っていかなければ取り除くことはできないと、私は考えるようになりました。』
(※提出書類 志望動機より)
この2年半の間に私は、総括生活支援員としてできることを常に考え、主体は“住民の皆さん”であり、そして支援の現場で日々、数々の業務に励んでいる生活支援相談員の皆さんの話を真摯に聞き受け止め、お困りごとに対しては常に一緒に考えていくこと、また必要な情報はきちんと発信して、共に歩み理解者になれるよう努めていくことなどを学びました。
避難者支援の職務に興味をもった私が、現在こうして未経験ながらも活動できているのは、周りで支えてくれているこの業務に関わっている全ての皆さんのおかげと感じています。
普段通りの生活を取り戻しつつも、まだまだ喪失の悲哀を背負い、自らを懸命に奮い立たせている被災者の方々もたくさんいます。そんな方々が、安心して笑顔で語りあえる機会や場所の提供をしたり、見守り支援に対し手堅く活動している相談員の皆さんの声をこれからも聴き、そして伝えて、気持ちを汲み取っていけるように私は取り組んでいきたいと思います。
総括生活支援員 安齋 裕美子