視察研修によって育まれた信頼関係づくり
テーマ | 住民との信頼関係づくり |
社協名 | 葛尾村社会福祉協議会 |
時 期 | 平成29年 |
【背景】
- 葛尾村民約1,600名は、東京電力原発事故により国から全村避難が指示された。
- 村民600人は、3月14日に村から約100Km西にある福島市あづま運動公園に避難したが、翌日にはさらに100Km西の会津方面へ避難を強いられ、その後は会津地方4町村に分散し、体育館や旅館での避難所生活が始まった。
- 平成23年7月には葛尾村に隣接する三春町に仮設住宅約450戸が完成し入居が始まった。同時に葛尾村社協の生活支援相談員による避難者の訪問活動が始まった。
- 数年が経過した後、避難先の地域住民が相談員として雇用されることが増えたが、葛尾村民の避難体験を詳しく知らなかったため会話が上手くつなげずにいた。
ミーティングでは、主任生活支援員と生活支援相談員との間にこんなやりとりがあった。
相談員今日訪問したAさんはお元気そうでした。特別な支援は必要無いようです。
主任どうして支援が必要ないと思ったの?
相談員「元気ですか?」と尋ねたら、「元気だよ!」という答えが返ってきました。
主任ほかにどんな会話をしたの?
村の話や避難中の思い出話はしてくれた?
これからの生活をどうしたいのか話してくれた?
相談員何を話して良いか分かりません・・・
- 避難者と会話ができていない。会話が進まなければ避難者との信頼関係を築くことは難しく、避難者の真の声を聴くことはできない。 会話の糸口を見つけるには・・・・・・・?
【取組み】
- 主任生活支援相談員は、事務局長に避難者と会話が続かず困って悩んでいる相談員がいることを報告し相談した。
- 事務局長は、「相談員の中には、村外出身者や避難を経験していない相談員もいる。村民がどんな思いで避難していたのか?当時と同じ避難経路を辿ることで避難者の思いに共感する事ができるのではないか?共感が生まれれば、相手を思いやる気持ちも芽生え、避難者との関わりも深まるのではないか。」と考え、避難経路を辿る視察を企画した。
- 企画にあたって、葛尾村を出てから3日間の避難経路約160Kmの行程を再現することで、当時の過酷な避難状況を身を持って体験してもらう意図を込めた。
- 物見遊山ではなく、避難者を理解するための研修であることを事前に時間をかけて話し合い、真剣な研修になるように取り組む姿勢を作った。
- 二次避難所として受け入れてくれた旅館の女将さんから当時の村民の状況について振り返ってもらった。
「はじめは旅館での避難生活に戸惑いを感じておられる様子でしたが、時間が経つうちに旅館の修繕をしてくれたり、畑仕事の手伝いや小物づくりで館内を飾ってくれたりと、自分の身に起こったことや今後の不安な気持ちを必死で乗り越えようとしている姿が印象的でした。」
【工夫】
- 貸切バスの中では、相談員の一人が、村が編集発行した「震災の記録」(※)に記載されている避難者自らの避難時回想記を朗読した。朗読を聞いた参加者が当時の避難状況をイメージしやすいようにした。
(※)葛尾村HP http://www.katsurao.org/soshiki/1/kiroku.html - 避難当時の村民の状況を知る方の話を聞いてもらう事で、避難者の切なさ・やるせなさなど言葉に表せない心の機微を感じてもらえるようにした。
【効果】
- 生活支援相談員の活動に対する意識が変わり、支援の質も変わりつつある。
主任生活支援員
この視察が終了してから、ミーティングでの避難者の様子の報告内容が細かくなり、避難者を少しでも理解しようとする意欲が感じられるようになりました。避難者との対話が進み、避難者が心を開いてくれたことで、相談員としての自信がついたようです。生き生きした活動ぶりをうれしく思います。