社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

すべての垣根を越えて「もちつもたれつ」 互いに支え合って今を生きる

2014/10/29
 


すべての垣根を越えて「もちつもたれつ」
互いに支え合って今を生きる

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▲サポートみさとのスタッフ、安達 忍さん。「サポートみさとは、2010(平成22)年12月から活動している中間支援組織です。震災前は、会津美里町にある町民活動団体のヒアリングをしていました」


2011年3月から10月まで災害ボランティアセンターを運営


2011(平成23)年3月、会津美里町は楢葉町と災害支援協定を結んでいたことから原発事故で警戒区域に指定された同町の皆さん約1,000人を受け入れました。3月23日、会津美里町社会福祉協議会が立ち上げた災害ボランティアセンターの運営を任されたのが「会津美里町町民活動支援センター準備室 サポートみさと」(以下、サポートみさと)です。
「一番多いときで避難所が9カ所ありました。最初の仕事は、炊き出しの調整と避難所の場所を記したマップ作りでした。観光マップには載っていない、使われなくなった幼稚園などが避難所になっていましたので新たに作る必要がありました。ブログもすぐに立ち上げました。それを見て県外からボランティアに来られた方が大勢いました。4月以降は、マッサージとかマジックショーなどの支援が入ってきたので避難所への割り振りもしました。町内の皆様にも団体、個人含めて様々なご支援、ご協力をいただきました」と話すのは、スタッフの安達忍さんです。
6月頃から宮里応急仮設住宅への入居が始まると、広報紙「みさぼだより」も発行し情報提供に務めました。その後、9月5日に一次避難所がすべて閉じられ、仮設住宅や町内外の借り上げ住宅などへの移動が済み一応のめどがつくと災害ボランティアセンターは、その機能を終了させました。

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▲仮設住宅や集会所の間取り、楢葉町災害対策本部いわき出張所の情報、支援物資配布のお知らせやイベント情報などを届けた会津美里町ボランティアセンター広報紙「みさぼだより」。2011(平成23)年6月から10月にわたり計6号発行した



町内外のボランティア団体、グループを
仮設住宅の自治会や楢葉町社協につなぐ窓口


現在の場所、会津美里公民館1階にサポートみさとの拠点が出来たのは、2011(平成23)年10月15日です。「本来の業務は町民活動支援ですが、被災者支援事業と2本立てて取り組んでいます。大切にしているのは、主体性・自主性の尊重です。支援されるだけでは窮屈です。『もちつもたれつ』を分かりやすく伝えたいと思い、2つの事業を説明するときは、双方向の矢印で表現した図を使っています。ただ、長くなってくると支援疲れという部分もなきにしもあらず。押し付けにならないような心配りも大切にしています」
以後、サポートみさとでは、楢葉町社協からの要請や相談を受けてサロン活動の講師を紹介したり、夏まつりや冬まつりに必要な道具を揃える支援、県外からのボランティアをつなぐ支援を続けています。例えば、特産の高田梅漬けや会津の笹巻づくりの講師の紹介、材料調達面でのお手伝い。町内のNPOやボランティアグループの皆さんと仮設住宅の自治会や楢葉町社協につなぐ窓口。県外からボランティアバスを仕立てるなどして来られる皆さんを受け入れる際のサポートも行っています。
「とは言え仮設住宅のサロン活動に参加しているのは、本当に一部の町民です。もっと交流の機会を増やしたいとサポートみさとの自主事業の一つ、講演会などを仮設住宅内にあるログハウスをお借りして開催したこともあります」


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▲サポートみさとの事業イメージ


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▲2014年8月3日、宮里仮設住宅で開催された自治会主催の「ならは夏まつり」。今年で3回目になる(写真提供:サポートみさと)



「サポートセンターならは」で大沼高校演劇部の
「シュレーディンガーの猫」を初上演

これまでの活動で特に安達さんの印象に残っているのが、大沼高校演劇部の生徒の作品を仮設住宅内にある集会所「サポートセンターならは」で上演したことです。顧問の先生から「被災者を題材にした作品があるのだけれど発表の場がない」という話を聞き、サポートセンターに繋ぎました。当日、会場は満員御礼。「皆さん感動されて上演後、拍手が鳴りやみませんでした。生徒たちに介護予防でサポートセンターを利用しているおばあさんたちから手づくりの縁起物『さるぼぼ』のプレゼントもあって本当にいい時間でした。その後、生徒たちは、東京や郡山でも上演する機会に恵まれたのですが仮設住宅で上演したことが自信になったと言っています。2013年8月の東京公演の時は、資金不足を仮設住宅の皆さんが募金をして応援してくださいました」

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▲2013(平成25)年5月8日、楢葉町民が避難するする宮里仮設住宅内のサポートセンターならはで「シュレーディンガーの猫」を披露する大沼高校演劇部の皆さん(写真提供:サポートみさと)

大沼高演劇部の創作劇「シュレーディンガーの猫~Our Last Question~」は、会津地方の高校に避難した女子高生と転校先の同級生が、さまざまな葛藤を乗り越えて友情を深めていく物語。2012年(平成24)年に開催された第66回福島県高等学校演劇コンクール最優秀賞を受賞した。



2012年5月、サロン「ならは」、町内のイベント情報を
届ける「おたがいさま新聞」を発刊

2012年5月創刊の「おたがいさま新聞」(月1回360部発行)は、借り上げ世帯(住宅)が情報不足にならないように「みさぼだより」の替わりに発行し始めました。
「完成した新聞は、借り上げ住宅も含めて会津方部にお住まいの楢葉の方、全員に届くようになっています。大熊町と双葉町の方で美里町内の借り上げ住宅に住んでいる方にも届けています」。

おたがいさま新聞31号
▲「おたがいさま新聞」は、仮設住宅内での催しや会津美里町内のイベント情報を掲載している


これからも主体性と自主性を尊重した町民活動支援と
被災者支援事業を続けていきます

サポートみさとでは、昨年末から町民活動支援にも取り組んでいます。この夏には、第4回目のネットワーク会議を開催しました。
「毎回、約42団体にご案内しています。震災前に行っていたヒアリングは、まちづくり関係の団体に絞っていたのですが今は違います。震災の時に『何か私たちにやれることはありませんか?』と申し入れをしてくださった方々の多くは、趣味のサークルや団体の方々でした。ポテンシャルの高さで言ったらみなさん同じだと気づいたんです」
3回目の会議で検討された会津美里町町民活動広報紙「B+ びーぷらす」は、2014(平成26)年6月に創刊号を発行しました。「『まちを再生する99のアイディア』など、まちづくり学習会で飛び交う意見は、私たちだけでなく楢葉町の皆さんが自分たちのまちを再生するときのヒントになるのではと思っています」
震災から3年2カ月が経過した今年5月、楢葉町は帰町を目指す時期を2015年春以降と示しました。2014年10月現在、会津美里町の宮里仮設住宅には116世帯200人、会津方部の借り上げ住宅には134人の方々が暮らしています。サポートみさとでは、これからも主体性と自主性を尊重した町民活動支援と被災者支援事業を続けていきたいと考えています。


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▲2013年12月12日に開催された第1回ネットワーク会議・交流会。まちづくり政策課の職員による助成金の説明、助成金を受けて仮設住宅の支援を行った団体の事例紹介の後、交流会と続きました(写真提供:サポートみさと)



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▲会津美里町町民活動広報紙「B+ びーぷらす」。10月1日に発行された最新号。仮設住宅での暮らしを支援するボランティア団体を募る記事も載せている
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▲「まちづくり学習会」。「まちを再生する99のアイディア」をテーマにした回のひとコマ(写真提供:サポートみさと)


●取材を終えて●

震災後、避難所、そして楢葉町の皆さんが暮らす仮設住宅でのボランティア活動を、今も継続してくださっている団体、グループ、個人の皆さん。安達さんは その活動に深く感謝しながら「皆さん、本当にすごい潜在能力を持っているんです」とおっしゃっていました。サポートセンターみさとの魅力は、大沼高校の演 劇部と楢葉町の皆さんとが分かち合った時間に象徴されるように思いました。今年7月、自然エネルギー発電による電力の地産地消を目指す住民主体の会津美里 町自然エネルギー研究会が楢葉町に太陽光発電システムを取り付けた移動電源車を贈りました。製作には、楢葉町から避難している大工さんも参加したそうで す。すべての垣根を越えて「もちつもたれつ」。互いに支え合って今を生きるのだと思いました。(kamon)




団体名 会津美里町町民活動支援センター準備室 サポートみさと
設立時期 2010年12月
スタッフ 常勤2名
運営 2015年3月まで「(株)会津美里振興公社」が、会津美里町の委託を受けて管理運営を行っている。
所在地 〒969-6264 大沼郡会津美里町高田甲2905-1
TEL 0242-85-7634 FAX 0242-85-7635
URL http://www.supportmisato.jp/
会津美里町町民活動支援センター準備室 サポートみさとFacebook
https://www.facebook.com/aizumisato
■県内外からの支援活動についての問い合わせや相談について
TELまたはmailでお問い合わせください。
■現在、共に活動しているNPO法人、市民活動団体等
・会津美里町社会福祉協議会
・楢葉町社会福祉協議会
・会津美里町内で活動しているNPO、任意団体の皆さん

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