社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

東日本大震災と私たちの課題 ~温かなご支援に感謝しつつ

2012/02/06
 

昨年3月11日の東日本大震災から間もなく1年になりますが、津波による甚大な被害の深刻さに言葉を失ったまま、心は痛んでやみません。
そして、福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染と風評被害の悲劇は、今も続いています。
青葉学園は、家庭で暮らすことができない子どもたちが暮らす児童養護施設です。
放射線が子どもに与える被害は、特に深刻なものがあると知り、入所する60名の子どもたちの生活と健康を守るために、今日まで緊張した日々を送ってきました。
それは、子どものいる家庭でも同じだと思います。
除染をはじめ将来への見通しが持てない中で、気が滅入ることもありました。それにもかかわらず、希望を失わずに今日まで歩めたのは、近隣をはじめ地域の方々、さらに多くのボランティアの方々のご支援があったからです。
原発事故に関しては、コミュニティ全体が分散し現在も避難生活をしている方々をはじめ県民全員が被害者です。
私たちの美しい郷土が、放射能に「汚染」されている。その事実に、私たちは怒りや悲しみを覚えるとともに、私たちの自尊心まで痛みます。
さらに危惧されるのは、私たちの置かれた状況や考え方の違いから人間関係に深い溝が生まれることです。
例えば、戸外での子どもの活動を可とする親もいれば、不可とする親がいる。
自主避難する家族があれば、避難しない家族がいる。損害賠償の対象地域とそうでない地域がある等々の現実です。
そこに暮らす人々が一体感を持って暮らしていた地域の人間関係が、震災後の様々な状況下で分断されてしまうことを恐れます。
そのような中で、私たちは県下で活動される多くのボランティアの方々の姿から人と人との絆の大切さを身に染みて感じさせられ、支えられ、励まされています。あらためて、私たちが力を合わせて福島県の復興に取り組みたいと思います。
多くの被災地で「兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川」で始まる唱歌「ふるさと」を歌う光景が見られました。
故郷とは、父母をはじめ地域の方々に見守られ、友人とともに安心して「子ども」を生きることができたところです。
人は、そこで成長し、志を抱いて自立の道を歩むことができるのでしょう。
今も震災後の深刻な被害に苦しむ福島県ですが、ボランティアの方々も加わっていただきながら、新たな「ふるさと」の再生を目指したいと切に願わずにはいられません。

社会福祉法人 青葉学園 園長
神戸 信行

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