社会福祉法人 福島県社会福祉協議会 避難者生活支援・相談センター

双葉町社会福祉協議会

2018/08/22
 

緊急事態への対応と避難者に寄り添う支援


社協名 双葉町社会福祉協議会
時 期 平成29年3月

【背景】

  • 双葉町は原発事故により、現在も町の面積の96%が帰還困難区域に指定されている。全町民は避難対象となり県内外に避難しており、現在は町外に整備された復興公営住宅や避難先で再建した住宅への転居が進んでいる。
  • 町民は避難によって家族や親しい友人、長年関係を築き助け合ってきた隣近所と別れて生活しているため、急な病気やトラブルが起きたときに頼れる人が近くにいないことが多い。特に高齢者は自身で対応できない時には生活支援相談員に助けを求めることもあるため、緊急の事態も想定して訪問をしている。
  • ある復興住宅で、二人暮らしの高齢者夫婦宅(A夫妻)を訪問した際に妻がパニック状態で相談員に助けを求めてきた。



【取り組み】

1.事態を把握する

  • ①妻を落ち着かせて詳しい話を聞き、何に困っているのかを整理する。
    [内容]
    夫が外出先で具合が悪くなり救急搬送されたと連絡を受けたがどうしたらよいか分からない。

    [妻が困っていた理由]
    ・タクシーを使っても介助なしでは一人で病院まで移動することができない。
    ・近くに住む知人は高齢で、夫が搬送された病院までの運転や付き添いを頼むことが難しいため、助けを求められない。
    ・動揺しているので一人で行動することに不安を感じる。

    [以前から把握していた夫妻の生活状況]
    ・高齢で二人暮らし。
    ・家族や親類は県外で暮らしている。
    ・妻は持病の為一人での歩行が困難で転倒することがある。
    ・介護サービスを利用せず夫が妻の面倒を見ている。

  • ②社協事務所に報告し指示を仰ぎ、夫妻の生活状況を考慮して必要な支援は何か判断した。

2.緊急時の対応として必要な支援を提供

  • ①妻は短い距離でも一人で歩くのが困難なため、相談員が付き添って夫が搬送された病院までタクシーで向かった。
  • ②病院では、夫妻から依頼されて医師による病状説明を一緒に聞いた。(本人たちは医師の説明を理解できるか不安だった)
  • ③相談員は二人一組で活動しているため、もう一人の相談員は車で病院に向かい、夫の病状を確認してから社協に戻り状況を報告。


3.夫妻の生活課題を把握する

  • ①夫は10日ほど入院することになったが、夫から入院中の妻の生活が心配だと相談された。
  • ②妻は一人で外出することができない。
  • ③家の中の移動も伝い歩きで転倒の恐れもあるため、一日数回の見守りが必要である。
  • ④家族や親類は離れて暮らしているため、夫妻の日常生活を支援することが難しい。



4.福祉サービスにつなぐ

  • ①妻は要介護認定を受けていなかったので、すぐに双葉町地域包括ケアセンターに連絡して介護保険サービス利用申請の手続きを進めた。
  • ②夫妻に付き添っていた相談員は妻と一緒に自宅へ戻り、食事などの日常生活について妻と話をして数日なら一人で過ごせることを確認した。
  • ③ホームヘルプサービスは3日後に開始されることになった。それまでは生活支援相談員が訪問頻度を増やして妻の見守りを強化した。


【工夫】

A夫妻の事例に対する工夫

  • 普段は病院への同行はしないが、今回はA夫妻の状況から必要な支援と判断した。頼れる人がいない高齢のA夫妻は、病院に同行し医師の説明を一緒に聞き、家族のように寄り添ってくれる人がいたことで不安を和らげることができた。
  • 妻の支援には生活支援相談員やホームヘルパーだけでなく、近所の住民にも協力してもらった。朝夕の2回食事を摂ったかの確認をしてくれ、料理を作って持って来てくれたりもした。

緊急事態を想定した訪問時の対応

  • 双葉町社協では独居者や高齢者世帯、病気を抱えている方が留守の際には、安否が確認できるまで確認作業をすることにしている。

[確認フロー]
①チャイムを鳴らしても反応がない
②デイサービスなどの利用日ではないか確認する(事前にケアマネージャーと情報共有)
③郵便受けの様子、ベランダの洗濯物、カーテンが空いているかなど周辺の状況に異常がないか確認する
④本人に電話をする
⑤電話に出ない場合は社協事務所に報告をして緊急連絡先に電話をしてもらう
※介護保険サービスを利用している方は、ケアマネージャーに連絡して情報(旅行、入院など)を得たり、ケアマネージャーから緊急連絡先に連絡をしてもらう


【効果】

  • 今後緊急事態が起きても、「助けて」と言える人や場所があると分かってもらえたこと、親しい人と離れて暮らしていても、ご近所や支援者が見ていてくれるという安心を実感してもらうことができた。

  • この1件以降、少し気難しかった夫が、気安く接してくれるようになり、また、現在は相談員が夫妻の相談窓口となっている。困りごとを早く把握できるので、ケアマネや関係機関につないで早期に対応ができている。

  • 介護サービスを受けるきっかけが掴めず老々介護状態であったが、夫が退院後もサービスの利用は継続しており、安心安全な生活を送ることができるようになった。





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