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特定非営利活動法人しんせい

Leave No One Behind
──誰ひとり置き去りにしない。
みんなとつながることで、明日へ。



東日本大震災後に避難を余儀なくされた人たちの中には、障がいをもった人もいました。郡山市のNPO法人しんせいは「誰ひとり置き去りにしない」を合言葉に、双葉郡の6事業所と避難先の5事業所、震災後に立ち上がった2事業所の計13の福祉事業所と協働で取り組みました。代表理事の富永美保さんに話を聞きました。

■ 事業所名の「しんせい」とは、どんな意味ですか?

障がいのある人と共に福島を新生していこう。そんな想いをこめて、“しんせい”と名付けました。2011年に事業所を立ち上げ、今はおよそ25人のさまざまな障がいのある人が働いています。
しんせいは、太田西ノ内病院(郡山市)のすぐ隣にあります。

■ 震災から9年が経ちますが、当初どのような活動を?

しんせいがスタートしたのは、2011年の秋。避難所が閉鎖され、仮設住宅や借上げ住宅の生活が始まった頃でした。避難所には、障がい福祉サービスを知らずに生活してこられた方もいて、保健師さんや生活支援相談員さんをはじめ、関係機関と連携しながら日中活動の場をつくりました。

■ 当時、どのようなご苦労がありましたか?

そうですね。福祉サービスを利用するには、障害者手帳の取得が必要となるのですが、「ご先祖様に申し訳が立たない」「子どもの結婚に差し障るのでは…」などの声もあって、すぐに受け入れることができない方々もいらっしゃいました。それに加えて、避難生活の心労から不安や孤独を感じる人もたくさんいました。
しんせい代表理事の富永美保さん。障がいのある人とともに集い、働く場、市民との交流の場づくりに尽力しています。

■ 交流サロンをスタートしたのは、そうした理由からなんですね。

当時は施設には何もなくて、調剤薬局を改装してスタートしました。2011年10月から12月までの3ヵ月は自主財源で運営していましたが、翌年には、福島県障がい者自立支援拠点整備事業として、避難する障がい者の日中活動の場を設けることができました。
2012年頃のサロン活動の様子。避難者の不安解消を主な目的としたイベントが企画されました。

■ サロン活動の様子を教えてください。

交流サロンスタートから1年が過ぎる頃から、サロン活動に変化が訪れました。参加者の数が目に見えて減ってきたのです。理由を尋ねてみると、「一人で家にいるのは寂しい、家族とケンカしながらいるのも辛い、だけど、サロンで一生懸命お喋りするのにも何だか疲れてしまって…」という声が聞かれるようになったのです。もともとお喋りは苦手な人たちです。

■ それでどうされたのですか?

お楽しみ会で時間を潰すという発想ではなく、一人ひとりに“役割”が必要なんだと思いました。2013年からはサロン活動を縮小して、みんなで仕事を始める活動に切り替えました。

■ 障がい者の避難生活と仕事、どちらも難しい問題を抱えていますね。

はい。避難先の新しいまちでは地縁者もいませんから、これまでのような仕事は期待できません。みんなが集まっても工賃をお支払いできない状況が続きました。先が見えない状況でしたが、私たちも仕事を通して福島復興の一助を担いたいという声に、企業やNGO、NPOなどが力を貸してくださり、13の事業所が協働で仕事ができる体制を作ることができました。

■ 魔法のおかし「ぽるぼろん」ですね。

箱を作る人、お菓子を焼く人、配送する人、営業する人など、それぞれが役割をもって、協働でお菓子つくりをしました。レシピは日清製粉さん、ネットショップの立ち上げはヤフーさんが手伝ってくれました。また、デニムカバンやペンケースなどを製作するプロジェクトも立ち上げ、こちらはブラザー工業さんに物心両面から支援をいただきました。

お菓子つくりの様子。商品に関わる仕事を分担し、知恵を出し合うことで協働の仕事を整えました。

2014年販売当時の魔法のおかし「ぽるぼろん」。避難された方へ福島の近況など手紙を添えて送ったこともあります。現在は、5つの福祉事業所が協働でお菓子つくりを行っています(10月〜4月までの冬季限定販売)。

国内有数のデニム産地・倉敷市の企業から提供された生地を使って作られたカバン。

■ 現在はどのような活動をされていますか?

双葉郡も避難指示解除が進み、故郷に帰還するための動きが出てきました。仮設住宅も徐々に閉鎖され、避難者は復興公営住宅などに移り始めています。避難者にとっては、また新しいコミュニティで孤立と向き合うことになります。
私たちは復興公営住宅と市民を結ぶ交流事業やサロン活動などを通して一人でも多くの方が独りぼっちにならないように支援しています。

■ 新しい交流のうごきですね。

しんせいでは、葛尾村社協さんと共催のサロンに月に2回訪問しています(三春町・三春の里みどり荘)。避難者支援や障がいに対する理解といった堅苦しい感じではなく、高齢者の皆さんとの何気ない楽しい会話を楽しんでおり、お互いに小さい頃から知っている方もいれば、震災を機に親しくなった方もいらっしゃいます。
月に3回開かれる三春の里みどり荘のサロンの様子。葛尾村のおじいちゃん、おばあちゃん、しんせいのスタッフの温かい交流の場になっています。

■ お互いのことを知ることから、ですね。

そうです。たとえば、聴覚に障がいのある方が復興公営住宅に移った場合、こちらから説明しない限り、周囲はその方に障がいがあることに気づきません。「挨拶をしても無視された」といった誤解をされる可能性も考えられます。サロン活動では住民同士のコミュニケーションを通して、こうした問題を解決することができます。

■ 避難者支援のこれからは?

故郷に戻っても、通える事業所がない、病院がない、孤独といった理由から避難先に留まる障がい者が少なくありません。本当の復興とは、障がいの有無よりむしろ、「この人がいてくれるから、いろんな人とつながることができる」という想いをかなえられる場づくりだと思います。
しんせいでは現在、郡山市逢瀬にブルーベリー畑を開き、農福連携による里山再生、企業の障がい者理解研修プログラムなどの新しい活動を展開しています。

──ありがとうございました。

連絡先

特定非営利活動法人しんせい
〒963-8022 福島県郡山市西の内1丁目25-2
TEL・FAX 024-983-8138
(HP)https://shinsei28.org
(ネットショッピング)
https://store.shopping.yahoo.co.jp/nposinsei/?__ysp=44GX44KT44Gb44GEIFlhaG9vIeODjeODg%2BODiA%3D%3D
(ネット募金ご協力のお願い)
https://donation.yahoo.co.jp/detail/5198001/
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