平成23年3月11日に発生した東日本大震災とこれに伴う東京電力第一原子力発電所事故により多くの福島県民が避難生活を強いられました。
東日本大震災から6年を経過しても避難生活をされている福島県民は福島県内外で約8万人がおり、避難者(被災者)自立に向けた課題は複雑・多様化しています。
避難者の「健康不安と自立再建不安の解消」と「孤立化防止」を目指し、生活支援相談員は見守り活動及び相談支援、住民同士のつながりを図るサロン活動等を、関係市町村社会福祉協議会や避難者を支援する関係自治体及び専門機関などと協働・連携して取り組んでいます。
そこで、生活支援相談員活動の状況及び課題、今後の方向性を報告します。
1 避難者の避難状況
東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故による避難者は、帰還、復興(災害)公営住宅入居、自宅再建等により、応急仮設住宅・借上げ住宅・公営住宅(市町村・県営住宅等)に避難生活をしている方は減少しています。福島県内に避難するこれら3種類の合計入居者数は、平成24年3月29日の98,207人、また、福島県外へ避難している方は、平成24年3月8日の62,831人が最大でした。
福島県内の避難状況(人)
H24.3.1 | H25.3.1 | H26.3.3 | H27.3.2 | H28.3.1 | H29.3.6 | |
---|---|---|---|---|---|---|
応急仮設住宅 | 31,828 | 32,352 | 28,483 | 24,098 | 18,602 | 12,381 |
借上げ住宅 | 64,066 | 58,796 | 50,523 | 42,007 | 32,021 | 23,375 |
公営住宅 | 1,432 | 1,350 | 1,205 | 1,006 | 670 | 428 |
雇用促進住宅等 | ― | 4,652 | 4,117 | 3,323 | 1,916 | 1,190 |
親戚・知人宅等 | ― | ― | 3,223 | 2,643 | 2,263 | 2,234 |
避難者数 計 | 97,326 | 97,150 | 87,551 | 73,077 | 55,472 | 39,608 |
福島県外への避難状況(人)
H24.3.1 | H25.3.1 | H26.3.3 | H27.3.2 | H28.3.1 | H29.3.6 | |
---|---|---|---|---|---|---|
県外避難者 | 62,610 | 57,135 | 47,995 | 45,735 | 43,139 | 39,598 |
2 生活支援相談員の配置数
生活支援相談員は、平成23年8月から関係市町村社会福祉協議会に配置され年度別の配置数は次表のとおりです。H24.3.1 | H25.3.1 | H26.3.1 | H27.3.1 | H28.3.1 | H29.3.1 | |
---|---|---|---|---|---|---|
配置社会福祉協議会数 | 30 | 29 | 29 | 29 | 28 | 26 |
相談員数(人) | 171 | 196 | 201 | 202 | 267 | 283 |
3 訪問活動実績
平成27年度については、訪問活動において把握した要援助者に対する延べ相談支援人数(65,443件)、様子伺い(509,561件)、訪問したが留守(317,289件)を合計すると、892,293件の訪問活動を行いました。生活支援相談員は2人1組での活動が主であるため、実訪問活動件数は概ね446,146件となります。相談支援人数
23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | 27年度 | 28年度 |
---|---|---|---|---|---|
23,708 | 53,796 | 46,999 | 41,153 | 41,520 | 30,354 |
延べ相談支援人数
23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | 27年度 | 28年度 |
---|---|---|---|---|---|
32,732 | 78,697 | 72,798 | 62,370 | 65,443 | 43,643 |
※訪問活動において把握した要援助世帯とは、一人暮らし、高齢者・障害者世帯、母子・父子世帯、乳幼児がいる世帯など。
4 相談受付内容
各年度ともに最も多い内容は、「日常生活」であり、次に「健康・医療」、「家族」となっています。また、「住居」は平成26年度は復興(災害)公営住宅への住み替え、平成27年度は避難指示区域以外からの避難者が居住する応急仮設住宅や借上げ住宅の供与期間が平成29年3月末での終了が示されたことにより相談件数が多くなっています。日常生活 | 健康医療 | 介護 | 家族 | 制度 | 金銭問題 | 法律 | 就労 | 住居 | 放射能問題 | その他 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
23年度 | 19,880 | 12,993 | 2,366 | 6,365 | 1,044 | 647 | 68 | 1,829 | 4,009 | ― | 13,617 | 62,818 |
24年度 | 61,177 | 48,620 | 6,943 | 23,697 | 3,017 | 2,130 | 282 | 7,276 | 15,195 | ― | 51,418 | 219,755 |
25年度 | 63,274 | 48,474 | 6,352 | 21,390 | 2,367 | 1,465 | 385 | 4,569 | 12,710 | ― | 53,335 | 214,321 |
26年度 | 54,998 | 42,679 | 5,065 | 20,188 | 1,918 | 1,151 | 182 | 3,323 | 14,707 | ― | 19,552 | 163,763 |
27年度 | 59,587 | 48,767 | 4,925 | 21,043 | 3,351 | 1,188 | 155 | 3,215 | 16,515 | ― | 8,594 | 167,340 |
28年度 | 38,742 | 32,742 | 3,854 | 16,593 | 3,783 | 1,252 | 130 | 2,673 | 13,543 | 592 | 6,627 | 120,531 |
5 生活支援相談員活動での課題
応急仮設住宅等での避難生活が長期化することに伴い、認知症や身体機能の低下による要介護者の増加、閉じこもりや引きこもりによる孤立化等の課題が顕在化しています。応急仮設住宅では、復興(災害)公営住宅の完成が進むのに伴い、住み替えなどにより応急仮設住宅の空き室率が上昇し、応急仮設住宅に居住する避難者の「取り残され感」がますます強くなるとともに、自立再建の見通しがたたない高齢者が多くなっています。応急仮設住宅に居住する避難者の孤立化防止のため、訪問活動やコミュニティづくり支援の見直しが必要となっています。
アパート等の借上げ住宅では、生活支援相談員の活動報告によると、避難者であることを近隣に知られたくない方や訪問拒否・留守世帯が多くなっています。このような実態のため、真に支援が必要な対象世帯を把握することが困難になっています。また、新しい地域に自宅再建した避難者の支援においても、同様の課題が起こっています。
復興(災害)公営住宅に転居した避難者は、新しい近隣の入居者や地域住民とのコミュニティの形成に苦慮しています。安心した生活を継続するには、公営住宅内外とのコミュニティの形成と維持が課題となっています。生活支援相談員は、復興公営住宅に配置されているコミュニティ交流員や公営住宅所在地の社会福祉協議会と連携して避難者の相談支援活動にあたることが必要となっています。
避難していた地域から帰還した高齢者などに対する支援では、公的サービスへの依存が多くなることを踏まえて自立に向けた支援が課題となっています。
6 今後の支援の方向性
避難指示区域以外からの避難者が居住する応急仮設住宅・借上げ住宅の供与期間が平成29年3月31日でもって終了したこと、また、避難指示区域(帰還困難区域を除く)が解除され平成29年4月以降から避難者の帰還及び住み替えが今後一層進むことが予想され、これに伴い避難者の支援方針も変更されることが想定されます。本会は関係市町村社会福祉協議会と支援方針を一致させ、関係市町村及び機関・団体と連携して避難者生活の変化に沿った支援を着実に行うことが求められます。
また、避難元及び避難先社会福祉協議会が、避難者の情報を共有し支援の役割分担をしながら見守り活動及び相談支援、サロン活動等を進めていく必要があります。
さらに、避難者が帰還する地域では、地域包括ケアシステム及び地域共生社会の構築が今後行われることになりますが、福祉人材確保が困難な場合が多いため、生活支援相談員の活用及び人材育成が重要になっていきます。
避難者生活支援・相談センター センター長 大和田誠