かわる・つながる・うごきだす
避難指示解除後の都路町の復興を支える田村市復興応援隊
今年6月12日に葛尾村、7月12日に南相馬市の小高区などに出されていた居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示が解除されました。帰還した住民の生活支援、関係機関との連携などについて、県内で最も早く避難指示が解除された田村市都路町を拠点に活動している“田村市復興応援隊”を訪ねました。帰還者数は約6割。現在も微増中
“田村市復興応援隊”(以下、応援隊)は、避難指示解除後、急激な過疎化・少子高齢化に見舞われた都路町の復興を支えるために田村市が総務省の復興支援員制度※を活用して平成25年7月に発足しました。現在、佐原 禅(さはら ゆずる)隊長を筆頭に11人の若者(平均年齢31歳)が4本の活動の柱を軸に取組んでいます。帰還者数は、微増を続けており平成28年8月1日現在で2,548人、帰還率は約6割となっています。しかし、世帯数でみると7割となっており一人暮らしの高齢者世帯が増えているのが現状です。※総務省の復興支援員制度が東日本大震災の被災地各地で活用されています。この制度は福島県内の複数市町村で活用されており、平成28年8月現在で約120名の復興支援員の皆さんが県内外で復興に向けた取組みを展開しています。ふくしま復興応援隊は、福島の復興に向けて各地で活躍する復興支援員の愛称です。fukushimafukkououentai.jp
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①復興のタネ(地域の活性化につながる住民の想いを“復興のタネ”と呼び実現のサポートを行う)
②プロジェクト支援
(食と農のPRプロジェクトや田村市グリーンツーリズムなど田村市や地域住民が主体となって行う事業の事務局としての役割や企画・運営などのサポート)
③交流の窓口
(地域の窓口となってボランティアや視察・ツアーの受け入れ、その他の企画の案内)
④情報発信
(地域の情報をフェイスブックやホームページで発信。都路町民にかわら版を全戸配布)
ボランティアとの交流が住民を元気にする
都路町に存在する約1,000軒のお宅のヒヤリングからスタートしたという応援隊の活動は、聞くことで見えてきた様々なアイデアを人と人を繋ぎながら実現させていく“伴走型”の復興支援を進めてきました。その中の一つ「都路ボランティア作戦」は、住民が農業や商売の再開に向かって奮起しようするときに、1人では出来そうもない「草刈り」や「住宅の掃除」「イノシシ除けの電気牧柵の取り付け」などをボランティアの力を借りて解決していこうというものです。現在、月1回のペースを目標に実施しています。隊長の佐原さんにボランティア作戦で意識していることを伺うと「大きく2つあって1つは交流です」と答えてくださいました。「作業より住民とボランティアが一緒にご飯を食べている時間の方が長いんじゃないかと思うときもあるのですが、都路を忘れないで遠方から来てくださるボランティアの皆さんとの交流で住民の方が笑顔になったり、一度来た方に『また来たい』と思っていただけることが、その先につながると思っています」。もう1つは、「常に“住民の皆さん自身が自分で動くことが喜びや幸せにつながる”ということを念頭に取り組むことです。3年かけてそうした雰囲気が地域にじわじわと醸成されていったように思います」。応援隊はずっとある組織ではないので、応援隊がいなくなっても地域で暮らしていくための後押しになる作業をお手伝いし、“前に出すぎない”ことを心掛けているそうです。
応援隊の事務所から徒歩約3分の場所にあるコミュニティレストラン〈よりあい処 華〉は、住民活動を支援する取組みの先駆けとなったところで、築100年以上の古民家を再生し、ランチの提供や手芸教室、気軽なお茶のみの場として皆さんに広く利用されています。「建物は、2~3回の清掃ボランティアですっかりきれいになりました。その後は、オーナーご自身で畳を入れ替えたり、食器を買いそろえたりされていました。今は、活動のための助成金申請もご自身でなさっています。頼もしい限りです。地域に“華”のような拠点があると地域住民が集まって熱く語り合うことができます。語るところからアイデアや力が湧いてきたりするので、今後もそうしたキーパーソンになる人と場所を増やす支援を続けていきたいと思っています」
支援者連携ミーティング。課題は仮設閉鎖後のケア
様々な関係機関と応援隊の連携については、福島県県中地方振興局、田村市社会福祉協議会、福島大学、中越の復興に関わった専門家らが構成メンバーの「運営委員会」があります。「こちらは現在も四半期に一度、進捗状況を報告しながら課題検討などを行っています」。
月1回開催している『支援者連携ミーティング』もあります。参加しているのは、応援隊と社会福祉協議会の生活支援相談員、市役所都市計画課の仮設住宅担当者、田村市協働まちづくり課の担当者(元絆支援員)、田村市都路行政局の保健師、田村市福祉課の保健師です。
「今年度で仮設住宅の撤去が決まっているので、いま盛んに話し合いをしているのが『来年どうするか』を未定にされている方のケアです。応援隊としては、仮設に住んでおられた方が都路に帰還されたときにどういう形で関わっていけるかという話を詰めていきたいと思っています。同時に月1回、私たちが都路で行っている『高齢者ヒヤリング』の情報もその場で共有するようにしています」
と話してくださったのは、支援者連携ミーティング担当の市川愛さんです。
支援者連携のミーティングで必ず出てくるのが“足”だそうです。「確かに移動販売やデマンドタクシーなどもあるのですが、気軽に出かける足がないと住民主体の“サロン”などに参加しづらいのです。そこをどうするかがこれからの課題でもあります」
帰還率が低くても維持できるコミュニティづくりを
平成25年から都路町の復興に尽力してきた佐原さんに、今年、帰還が始まった他の地域にアドバイスをお願いすると「地域が異なるとなんとも言えないのですが…」と前置きして、こう話してくださいました。「帰還率が悪くても維持できるコミュニティを作ることを考えてほしいと思います。人が減るのは仕方がないとして、支援に入るのであれば帰還された人の意識、思いを尊重するというのが一番大事なことです。その上で必要であれば、イベントに外から人を呼ぶ仕掛けなどを試していかれるといいのではないかと思います」。
物事には光と影がありますから人を呼ぶことで疲れるなどの反対意見も出てくるかもしれません。しかしメリットもあります。訪ねて来られた方に質問されたり、頼られることで、誇りや自信を回復していく住民を何度もみてきたという佐原さん。
「全体的にどんな効果が出たか見えるまでには、相当時間がかかると思います。大きく構えず花を植えたりしながら体を動かしておけば健康を保てます。庭をきれいにしておけばお客様に喜んでいただけます。今できることを地道に積み重ねていくことが大事なんじゃないでしょうか」。
前出の〈よりあい処 華〉で検討されている配食サービスも参考になりそうです。「足腰が弱くなっている人に食事を届けるサービスなのですが、地域の元気なお年寄りの方に運ぶボランティアを引き受けてもらえれば、お金にはならないかもしれませんが地域に必要な人になれます。土地に慣れてしまうと何もしない方が楽ですが、それでは何も変わりません。
「応援隊の立ち位置としては住民のニーズを受けて動くのが基本なのですが、3年が経過したことですし、よく周りを分析しつつ起爆剤になるような地域づくりのアイデアを外から持ってくるなど応援隊が仕掛けていくことがあってもいいのではと思うようになりました」と佐原さん。
また、以前は介護職に就いていたという市川さんは
「高齢化率が高いということは、人生経験豊富な方がたくさん住んでいるということ。すなわち生活の知恵の宝庫。そこをうまく生かせれば、都路らしい特色を出していけるのではないかと思っています」
ともおっしゃっていました。地道な取組みと都路を思う熱いハートがまちや地域の未来を照らすのですね。
■連絡先■
◎事務所都路事務所/〒963-4701田村市都路町古道字新町46
船引事務所/〒963‐4312田村市船引町船引字源次郎120‐3
船引運動場応急仮設住宅第1集会所内 復興応援隊事務所
連絡先/0247-61-5153
Mail/tamura.ouentai@gmail.com
http://tamura-ouentai.org
◎委託団体
NPO法人コースター 田村市復興応援隊事業運営
住所/郡山市富久山町久保田字下河原191-1
連絡先/024-983-1157
Mail/info@costar-npo.org
http://costar-npo.org
●取材を終えて●
田村市復興応援隊の活動は、時間の経過とともに深まり進化し続けています。応援隊の活動報告もしかりです。平成27年度は「もっと田村のことについてみんなと話してみたい」「都路のこれからのことをみんなで考えたい」という声に応えるべく「これからの地域を考える地域交流会」を開催し、住民による地域活動の取り組みを発表する時間や地域のことを語り合い共有する時間も設けました。「きゅうりジャム」を開発した古道小学校5年生(当時)の活動を展示したり、滝根町でご当地コロッケを作っている滝根町商工会女性部の方や船引町の山間部で自転車競技“バンプトラック”のコースづくりに取り組んでいる若者グループによる活動発表などもあり、多いに盛り上がったそうです。
佐原さんは「自分たちが暮らす市内で、どんな人たちがどんな活動をしているのかを広く伝えることができた」とも話していました。伝えるということでは、ホームページも必見です。活躍する田村の“人”を通して田村の魅力を発信する「田村を創る人たち」は、応援隊のみなさんのほとばしる田村市“愛”を感じます。
(井来子)