サイトアイコン 福島県避難者生活支援・相談センター

郡山市社会福祉協議会

関係機関と密に連携・協調しながら安心・安全な
コミュニティと確かな生活復興を支援して行きたい

郡山市社会福祉協議会(以下、郡山市社協)は、2011(平成23)年10月から生活支援相談員5名を配置し、避難先社協として様々な支援活動を行ってきました。

福島県の方針で生活支援相談員の増員・増強が図られた2015(平成27)年度からは、15名体制で活動しています。震災から5年目に入り仮設住宅から復興公営住宅への入居など、移行時期に取り組んでいる活動と今後の課題について伺いました。



▲郡山市社協の生活支援相談員のみなさん


引っ越した人も気軽に訪ねてくる
包容力にあふれる仮設のサロン

郡山市内には、役場機能を移転させた富岡町、双葉町、川内村の3町村の仮設住宅が5カ所(富田町・南一丁目・緑ヶ丘・日和田町・喜久田町)あります。郡山市社協の生活支援相談員は、3町村の生活支援相談員が活動しやすいよう後方支援を軸に活動しています。「中身は、大きく2つです。1つが『仮設住宅内サロン等の活動支援』。2つ目が『民間借り上げ住宅等のニーズ把握等のための同行訪問』です」と話してくださったのは、神山貴裕さん(生活支援相談員・精神保健福祉士)です。

「柱の1つサロン活動は、これまで高齢者向け『いきいきサロン』や『子育てサロン』などを開催しながら培ってきたノウハウがありました。避難元社協になる富岡町、双葉町、川内村の生活支援相談員さんに、立ち上げに必要なことや具体的なプログラム案などを提供しながら一緒に取り組んできました」。サロンの中では、郡山市内の社会資源や行政情報、生活情報などの情報提供も随時行ってきました。「始めたばかりの頃は、人工透析を受けていた方には病院情報を、電球の交換をしたいという方には電気屋さん情報をというような形で行っていました。なかには1年経過しても仮設住宅の周囲100mが生活圏という方もいて。外出支援として公共交通機関の利用の仕方などをお伝えしたこともありました」。

移行の時期に入った今年度は、新たなコミュニティづくりが課題になっていますが、そうした中で仮設住宅のサロンは、再会の喜びを分かち合う場にもなっています。「引っ越しをされた方が顔を出されると『また会えたね』と、大喜びする方も。自主的に参加したいという空気感を大切に、皆さんがぜひ取り組みたいことを実現するサロンを続けてきたことがサロンの包容力につながっているのではないかと思います。これからも成功事例を共有しながら、それぞれにモチベーションを持てるようなサロンの支援を続けていきたいと思っています」。



「相談があればいつでも連絡してください」
民間借り上げ住宅の個別訪問は、希望があれば転居先でも継続

2つ目の柱「民間借り上げ住宅等のニーズ把握等のための同行訪問」は、避難元社協・避難元民生委員と一緒に訪問しながら生活課題を把握し、情報提供を続けるという後方支援です。2014(平成26)年度までは、実働が3人から4人までしか出せない状況でした。

それでも同行訪問に加えてできる限り定期的な個別訪問を行いながらサポートを続けています。訪問活動の課題は、郡山市内に居住されている方が多いので会えない期間が長くなりがちになってしまうことです。「もちろん『相談があればいつでも連絡してください』とお話しています。それでも心配な場合は、こちらから出向くよう心掛けています」。郡山市社協では、転居先でも希望があれば、避難元の社協と連携を取りながら個別訪問を続けて行きたいと考えています。





連携ということでは、避難先、避難元の生活支援相談員で情報の共有と交換のための連絡会も行ってきました。当初は、郡山市内に仮設住宅を持つ富岡町社協、双葉町社協、川内村社協の生活支援相談員の皆さんと郡山市社協の生活支援相談員で、毎月1回開催していました。「中身は、支援方針についての話し合いや困難ケースの検討などです」。

復興公営住宅の入居が始まった2015(平成27)年度は、体制が変わり現在は、大熊町と浪江町、復興公営住宅の支援を行っているみんぷく(※1)のコミュニティ交流員(※2)の出席を得て2カ月に1回開催されています。





▲郡山市社協生活支援相談室だよりRococo~ろここ~
郡山市内の生活情報や郡山市社協生活支援相談員の活動を届ける情報紙として隔月で発行しています)



※1「みんぷく」
いわき市内で活動するNPO、社会福祉協議会、民間団体、個人からなる復興支援のためのネットワーク組織。ニーズに沿った支援、迅速な支援を円滑に行うために2012(平成24)年6月に設立。翌7月16日に法人格を取得。正式名称は「特定非営利活動法人3.11被災者を支援するいわき連絡協議会」。“みんぷく”は「みんなが復興の主役!」というスローガンを短くした愛称。


※2「コミュニティ交流員」
復興公営住宅入居者同士や周辺の避難者、さらには地域住民とのコミュニティづくりに向けた交流活動支援を支援する。2014(平成26)年9月、県から委託を受けてみんぷくが県内4カ所に配置している。





民間借り上げ住宅で暮らす皆さんの集いの場
「茶話カフェRococo(ろここ)」

3年前から続けている「茶話カフェRococo(ろここ)」(以下、“ろここ”)は、民間借り上げ住宅の訪問活動がきっかけでした。当時、「郡山に避難して暮らし始めたけれど知り合いがどこにいるか分からない」「連絡が取れない」という声がたくさんありました。そこで、郡山市内に避難している皆さんが集まれる“場”を作ろうと考えたのだそう。相談の結果、毎月第1・第3水曜日、午後1時半~午後3時半まで、郡山市総合福祉センターを会場に開催することになりました。

1回目の“ろここ”は、2014(平成26)年9月でした。以来、告知や応援スタッフの派遣など、避難元社協からも応援をいただきながら開催しています。「当初は、集まって飲み物をいただく程度だったのですが、やがて『故郷の町歌を歌いたい』『体操したい』など、希望が出て来るようになりました。そこでアンケートをお願いすることにしました」。以下に記す開催予定表は、年2回実施しているアンケートをもとに考えたプログラムです。脳を活性化させる「脳トレ」やものづくり、さらに身体を動かすプログラムの要望が多かったことからラジオ体操や棒体操を多く取り入れています。

友達や近くに住んでいる同郷の人に会えるだけでなく、歌を歌ったり、健康づくりや手工芸もできると毎回楽しみにしている方が多い“ろここ”で力をつけ、自主的に茶話会を始めたグループが現れたときは、とてもうれしく頼もしく思ったそうです。



▲平成27年度“ろここ”開催予定表




ふくしま心のケアセンター、
しんぐるまざあす・ふぉーらむ・福島とも連携

“ろここ”には、ふくしま心のケアセンターも定期的に応援に来ています。「各テーブルに入っていただき、うまくコミュニケーションをとりながら皆さんの要望を吸い上げてもらっているので助かっています。昨年の夏、心のケアセンターが行った心と身体の緊張をほぐす『タッピングタッチ』も、とても好評でした」。土いじりをしたいという声に応えて野菜づくりも手掛けています。畑の支援は、郡山市内で活動しているNPO法人しんぐるまざあす・ふぉーらむ・福島(※3)の皆さんが行っています。猪苗代町にある畑に出かけるときは、郡山市社協でマイクロバスを出すなど社会資源をうまく繋ぎながら支援しています。

※3「NPO法人しんぐるまざあす・ふぉーらむ・福島」
震災前は、郡山を拠点に福島の一人親家庭の支援を行っていた。県内各地で相談会・茶話会を開催したり、一人親家庭を支援するサポーター養成など、シングルマザー・シングルファザーの支援を幅広く行っていた。震災後は、女性のための電話相談を皮切りに小物作りなど様々な支援を行っている。




“全員が発表者で観客”が合言葉
Rococoの人気ナンバーワンプログラム「芸能発表」

“ろここ”のプログラムの中で、毎年盛り上がるのが参加者主導の“芸能発表”です。“全員が発表者であり観客”を合言葉に、“ろここ”で知り合った仲間でグループを作りダンスを披露したり、会場の一角に設けた展示コーナーで作品展を開催しています。今回、特に喜ばれたのがこの作品展です。「“ろここ”に行きたいと思っているけれど会場まで移動する交通手段がない」「健康面の問題で顔を出すことができない」という方に、個別訪問時に声を掛けると「せめて作品だけでも」と、たくさん寄せられました。華やかなステージと賑やかな作品展、何よりも大きな達成感が皆さんを笑顔にしました。

「課題もあります。それは、参加者の固定化です」。今年度、復興公営住宅にも“ろここ”のご案内をすると、男性が参加されるようになり新しい風が吹き始めました。間もなく次年度の計画を練るためのアンケートを実施します。願っていることが叶うと皆さんのモチベーションも上がります。どんな答えが返ってくるのでしょう。楽しみです。



▲“ろここ”の芸能発表のひとコマ。郡山市社協の生活支援相談員のステージ
(郡山市総合福祉センター5階集会室 2015.10.21)写真提供:郡山市社協






▲会場の一角に設けた“ろここ”芸能発表、作品展示のコーナー。
一つ一つに願いや祈りが込められている力作を展示しました
(郡山市総合福祉センター5階集会室 2015.10.21)写真提供:郡山市社協






今年度から復興公営住宅関連の支援も行っています

人員が増えた郡山市社協の生活支援相談員は、今年度から活動の幅が広がり「個別訪問」と「サロン活動」に、復興公営住宅関連の支援も行うようになりました。個別支援の足掛かりを作るべく週2回、復興公営住宅の自治会などでコミュニティ交流員が常駐する時間に出向いて連携を図っています。そうした様々な取り組みの中で見えてきたのが避難されている方々の“疲れ”です。
「復興公営住宅も同じだと思うのですが、住まいを新築された方と話しをしていると、転居先で人とつながりたいという気持ちはあっても、どのように関わっていったらいいのかわからず、悩みながら暮らしていることが伝わって来ます。移転を繰り返す中で人との付き合いに疲れてしまったというか…。避難元社協さんと連携しながら何ができるか考えていかなければならないと思っているところです」。




孤独で孤立。解決のカギを握るのが関係機関と連携と協調
スキルアップを図りながら見守り力を高めたい

新たな視点も生まれています。仮設住宅や借り上げ住宅から転居した後の暮らしは、仮の住まいではなくなります。生活支援相談員は、これまでの支援に加えて地域で暮す被災者の生活支援という視点も必要になってきているとのこと。「転居された皆さんの生活支援から借り上げ住宅と仮設住宅におけるサポートまで、スキルアップを図りながら一層丁寧に取り組んでいきたいと思っています」と神山さん。

すると主任生活支援員の古川茂さんが「すべての支援に共通する課題が安否確認。見守りです」と続けました。復興公営住宅や新しい住まいでの暮らしは、1歩外に出れば隣の様子が分かった仮設住宅とは異なります。「引っ越ししたから大丈夫ということではありません」。高齢化が進んでいます。身寄りのない方もいらっしゃいます。人と人との繋がりが希薄になると地域の活力、見守り力も低下してしまいます。「孤独で孤立。こうした困難事例をどのように解決していくか。カギを握るのが連携と協調です」。避難元と避難先社協の生活支援相談員、コミュニティ交流員、関係機関と密に連携・協調しながら進めていきたいとのこと。

生活支援相談員一人ひとりの熱い思いが、安心・安全なコミュニティの形成と確かな生活復興支援を進める原動力となっています。


■連絡先■

社会福祉法人郡山市社会福祉協議会
〒963-8024 郡山市朝日1丁目29-9 郡山市総合福祉センター1F
TEL024-932-5311(代)
FAX024-932-6768
http://koriyama-shakyo.jp/



●取材を終えて●

毎年、盛り上がるという“ろここ”の芸能発表。優雅なダンスで人を喜ばせたり、緻密な作品で驚かせたりできる“場”があるって素敵なことですね。

取材に同行した総括生活支援員も「人前で発表するということは、その前にみんなで何度も集まって練習をして、その合間によもやま話などもしながら和気あいあいの対話の時間を過ごしているってことですよね。いいなあ。いいなあ」と何度もうなずいていました。

ちなみに今回のプログラムの1つ「フラダンス」は、拍手喝采を浴びてアンコールにも応えたそうです。称賛の拍手、オープンな対話の時間は、明日の活力になりますね。


(井来子)

モバイルバージョンを終了