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Vol.23 齋藤奈々(いわき短期大学幼児教育科1年)

ラトブ(いわき産業創造館)で開催している「つどいのひろば」

紅葉が美しい季節になりました。

皆さんは、どのようにお過ごしですか?

私は、いわき短期大学幼児教育科1年の齋藤奈々です。 思えば、4年前の3月11日、あの日が私らしく生きることを探し始めたスタート地点だったような気がします。

私は、あの震災直後、自分に何かできることはないか毎日のように考えました。
しかし、当時14歳の私は、今何が起きているのかわからない怒涛のような日々にあらがいようもなく、大人たちの選択に寄り添いながら、ただ流されていく毎日でした。そしてそれは、目には見えない放射能との戦いの日々でもありました。避難のため福島の家からも、友達からも離れることに、とめどなく涙が溢れたことを思い出します。

それから小さな私ですが、どんなに小さなことでも福島の何かの役に立ちたいという思いに駆られ、ボランティア活動を始めました。同時に「自分は将来この福島とどのように向き合っていきたいのか」についても考えるようになりました。この4年間におけるボランティア活動等は多くの刺激を私にもたらしてくれました。中でも15歳の時に、当時の校長先生に声をかけていただいたこと がきっかけで参加することのできたバングラディシュの「青空教室」における子どもたちとのふれあいは特に印象的でした。

バングラディシュは、日本の4割ほどの国土に約1億5千万人が暮らすアジア最貧国の一つ。サイクロン、洪水、地震といった自然災害にも影響を受けやすく、未だに人口の約3割が貧困層と言われています。その最貧層の子どもたちに、挨拶や立ち居振る舞い等を伝える「青空教室」を見学しました。短期間ではありましたが、その活動に携わる中で、私は、富裕層の子どもたちが生活や教育が十分に保障されている一方で、お金持ちの家のメイド等で労働力として長時間酷使されている最貧層の子どもたちがいることに不条理を感じ、怒りを覚えました。しかし、そのような厳しい日常生活を過ごしながらも、対照的に子どもたちの瞳は澄んでいて威厳さえ感じました。すぐに思い浮かんだのが大人たちの都合で翻弄されている福島の子どもたちでした。

結論、私は、これからの未来を支える子どもたちと共に過ごしていきたいと考え、保育者の道を目指すことにしました。保育の免許・資格の取得のためには、いわき市の短期大学を選択しました。その理由は、将来地元であるいわき市で働きたいと考えているため、福島県の子どもたちの側で、自分の目で子どもたちの置かれている実情を直視し、今いったい何が保育に求められているのかを肌で感じながら学んでいきたいと思ったからです。

短大では、さまざまなボランティア活動が行われていますが、いわき駅前ラトブで行われている「つどいのひろば」(写真)は、地域の子育てを支援する取り組みです。広場を訪れた親子には、絵本の読みきかせや遊びのコーナー等を通して、のびのびと遊びふれあうことができるようサポートしています。と同時に、学生である私たちにとっては、親子の息遣いを感じながら子育て支援活動を直に体験できる貴重な学びの場にもなっています。入学して半年、保育に関してはまだまだわからないことばかりですが、福島にいたからこそ実感できたこと、伝え合えたことがあり、やはり私の選択は間違いではなかったと改めて感じています。

いわき、福島と共に歩もうと考えてから、もう4年。望んでいた夢に向かって、こうして歩んではいますが、自分がこの福島で何かアクションを起こせたのかと考えると、わからなくなります。でも、残りの学生生活も多くの経験をして、世界中の子ども達の澄んだ瞳がけして曇ることがないよう祈りながら、福島のために働ける人材となるために頑張りたいと思っています。


【プロフィール】

齋藤 奈々(さいとう なな)
いわき市出身
いわき短期大学幼児教育科1年
託児ボランティア「つどいのひろば」 スタッフ
http://www.shk-ac.jp/ijc/info_community_volunteer.html


ラトブ(いわき産業創造館)で開催している「つどいのひろば」


ラトブ(いわき産業創造館)で開催している「つどいのひろば」。折り紙や積み木などの手遊び・指遊び、絵本の読み聞かせなどを行っています
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