避難指示が解除され帰還が始まった地域での初期支援のあり方
テーマ | 帰還者支援 |
社協名 | 飯舘村社会福祉協議会 |
時 期 | H29年4月~現在 |
【背景】
- 飯舘村は原発事故の影響で全村避難となった。約6千人の村民は県内外に避難しているが、H29年3月31日に帰還困難区域を除き避難解除となり、村民の帰還が始まった。飯舘村社協は避難指示解除直後から村に帰ってきた人の支援を行っている。
- 帰還が可能になっても村に帰ってきた人は高齢者が中心で「近所の人が帰っていないので寂しい」「村に帰ってきてもすることがない」など村での生活に孤独を感じる人が多かった。飯舘村社協は、村内での活動を始めてすぐに、村に戻っている人同士をつなぐ場をつくろうとサロンの開催を計画した。
【取り組み】
1.村の実態とニーズ把握
- 4月は全相談員を動員して村内の一斉訪問を実施。村役場に届け出があった方の情報の他に、村民や相談員の「見かけた」「家に車が停まっていた」という口コミ情報も基に訪問し、生活状況や困りごとの聞き取りをして素早い実態把握に努めた。
≪主な村民の声≫
・自分の他に村に戻っている人を知りたい
・近所の人が戻っていないので孤独を感じる
・交通手段がなく、通院、買い物に困っている など
2.ニーズに速やかに対応して、安心を提供する
- 5月9日には第1回「お茶のみ会」を開催した。「お茶のみ会」は、①村に戻っている人をつなぐ、②交流を持ってもらう、③社協が村でも支援を継続していることを知ってもらう という目的で行い、村で生活する不安を少しずつ解消したいと考えた。
- 訪問で聞き取った情報から、困ったときの連絡先一覧を作成した。健康不安、買い物に困っている時、病院・金融機関への移動手段がない時、不審者を見かけた時、火事になった時などにはどこに連絡すれば良いのかなど、身近な困りごとや緊急時の連絡先を一覧にして、サロンで配布した。
3.村民同士が関わる仕掛け
- 村民がつくるサークルに「お茶のみ会」への協力を呼びかけた。民謡同好会や舞踊と歌のサークルなどが練習の成果を披露したり、そば打ちサークルが手打ちそばを振る舞ったりと、村民同士が関わるきっかけとなっていて、現在もサークル側から協力したいと申し出がある。サークル側も「お茶のみ会」に協力することが新たな活動目標になり活性化しており、相乗効果を生んでいる。
- 移動手段がない方には飯舘村社協が運営している日常生活支援事業の中の外出支援ボランティア「お助け合い事業」の利用を勧めている。1回300円と有料だが、利用者も提供者も村民であり登録制なのでお互いに安心して利用でき、村内のサロン、金融機関、診療所などへの行き来に利用する方が増えている。
【工夫】
- 村に帰ってきた人の中には相談員の訪問を心待ちにしている方や、小さな不安をたくさん抱えている方が多くいた。社協がこれまでと変わらず寄り添っていることを伝えるためにも、何事にもスピーディに対応することを心掛け、まずは早い段階で一斉訪問を実施、“困ったときの連絡先一覧”は第1回の「お茶のみ会」(5月9日)で配布できるよう急いで準備した。
- 村の民生委員とも同行訪問をし、相談員が知らない情報や土地勘を活用して詳細に村の実態を把握することができた。関係機関と協力することで、切れ目ない支援を提供し村で暮らすことに安心を感じてもらいたいと考えている。
【効果】
- 「お茶のみ会」は村に帰ってきている方の交流の場としてだけでなく、村外で避難を続けている人や村民のサークルも加わり、広く村民が交流できる場となっている。
- 「近所に人がいなくて寂しい」「村に戻っても畑仕事ができないのですることがない」という高齢者のニーズに対応するため、同年9月1日にサポートセンター「つながっぺ」を開設した。いつでも集える場として、毎日10時~15時まで滞在でき、介護予防の健康体操、昼食、手芸やカラオケなどのレクリエーションで楽しい時間を過ごすことができる。生活支援相談員が始めた月2回の「お茶飲み会」も現在はサポートセンターが引き継いで行っている。
- 村外で避難を続ける方を訪問する際、村に戻りたいが村での生活に不安を感じているという相談に対して、これまでのように傾聴するだけでなく、「お茶飲み会」やサポートセンターの活動、「お助け合い事業」などについて情報提供できるようになった。