避難者は一村民 ~受け入れ側へのアプローチ~
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社協名 | 大玉村社会福祉協議会 |
時 期 | 平成23年~平成29年 |
【背景】
- 大玉村は福島県の中央部に位置し、震災当初原発事故等による避難者を村内施設や仮設住宅などで受入れ、約200世帯400名が生活していた。
- 大玉村社協は「避難者と村民の分け隔てはせず、生活者が村で安心した暮らしができるように支援する。」という方針のもと生活支援相談員2名体制で支援し、避難元社協やボランティアなどと連携して、仮設住宅の他平成24年より賃貸住宅や住宅を購入して生活する約90世帯250人も対象に訪問・見守り・相談支援を行っている。
- 仮設住宅から復興公営住宅、賃貸住宅や購入した住宅に転居した避難者は自立したと思われがちだが、中には仕事の問題、子供の学校の問題、ゴミ出しの問題を始めとするご近所付き合いなど多くの課題を抱えながらの生活が続いていた。
【取組み】
《村民ニーズの把握》
- 生活支援相談員は、日常生活に密接な関係がある近所付き合いについて村民に話を聞いた。
- 村民の中には「行政区にも入ってもらいたいし、歓迎する。」という人もいれば、「隣の人はどこの誰?」「何かしてあげたいけど、何を必要としているの?」「どうやって話しかければいいの?」と戸惑いの表情を見せる人もいた。
- 間違った情報により誤解や偏見を持つ人もいたが、多くの村民は移住者の受け入れを拒んでいるわけではなく、受け容れるきっかけをつかめずにいただけだった。
《村民へのアプローチ》
- 生活支援相談員は避難者への訪問時間をやり繰りして村民サロンに出向き、参加者へさりげなく避難の経緯・避難生活の現状・避難者の実態を伝えた。
- その活動で、避難から移住を選択した人々に対する村民の誤解と偏見は少しずつ解け始めた。
- 避難者対象のサロンで村民と交流する機会を設けた。交流サロン時に村民の参加者が徐々に増えてきた。特に春の花見会では80名参加のうち半数が村民の参加となっている。
《村の民生児童委員への働きかけ》
- 相談員は「村民と同じように見守り相談の対象にしてもらう」ため、村役場を通じ村の民生児童委員に顔つなぎをする同行訪問を持ちかけた。
- 村の民生児童委員からは「気にはなっていたけどきっかけが無かった。有り難いです」という言葉を頂き同行訪問が実現した。
【工夫】
《村民のつぶやきからニーズを知る》
- 難から大玉村への移住を選択する避難者の生活環境の変化は、突然の移住者を受け入れる村民にとっても、大きな生活環境の変化でもあることから、村民の思いやニーズを把握することに力を注いだ。
《村民との交流サロン》
- 避難者対象のサロンでは、村民目線でも参加しやすいテーマで企画した。
四季の行事:花見、餅つき
多彩な趣味:大堀相馬焼の陶芸教室、バーベキュー、終活講話 - 避難者扱いはしない
サロンではあえて席順などで村民と避難者を区別しなかった。参加者の自然な成り行きをそっと見守った。「私たちの活動は、あくまでもきっかけづくりで、次に別の所で会った時に“あぁあの時に”につながったり、サロンのテーマに興味を持って参加しているのであれば、そのうちお互いに慣れるはずと思っていました。案の定、隣同士になれば自己紹介を始めていました。自然とお互いの距離が近くなっていきました。」と相談員は振り返った。 - 相談員と避難者との繋がりを深化する
村民ニーズに対応しながら、避難者との信頼関係も大切にする取り組みを継続した。
避難者の誕生月の訪問時に、避難者の好みや興味を形どった手製のバースディカードを作り手渡した。世界に一つだけのバースディカードを受け取った避難者は、突然の誕生祝いに笑顔で答えてくれました。
《手製のオリジナルバースディカード》
【効果】
- 近所付き合いに悩んでいた避難者の中には、行政区の役員をするようになったり、地域の行事に参加するなど地域にに融けこむようになった方もいる。
- 現在、避難者対象サロンの参加人数が減ることはなく、避難者のみならず村民の社会参加も活性化している。
- 村の民生委員の訪問で避難者から「地域の民生委員を紹介してもらって良かった」との声が聞かれた。
- 避難者のみならず、受け入れる地域住民に対しての働きかけは、避難先社協だからこそできる活動であり、大玉村への移住を選択した避難者が安心した日常生活を送るために欠かせない重要な取組みとなっている。